北斗☆

北斗☆が亡くなったのは2歳でした。

私が仕事に行っている間に「家を飛び出しバイクにひかれた」と電話をもらい、急いで帰宅しました。

すぐに帰ったのに、北斗☆の体はすでに冷たく硬直してた。

おかしいと思った。

獣医さんに連れて行ったけど「本当に事故にあったばかりですか?」って言われた。

私は彼を責めた。

もっと前だったんじゃないの?放置してたんじゃないの?って。

でも違うって言うし、私も遺体がどれほどのスピードで変化するのか知らないしでうやむやにしてしまった。

メッセージで「まだ言えてない事があるから帰宅したら話す。北斗☆のこと。」と言われて、ああ、やっぱり放置してたんだ、もしかしたら直ぐに病院に行けば助けられたのかもしれないって思った。

でも、帰宅して彼から聞いた話はもっと残酷だった。

叩いて、逃げる北斗を捕まえて、自分が殺したって。

その後の話では五右衛門と陸斗☆は叩かれてもおとなしくしてたけど、「北斗☆は歯向かってきた」って。

あんな小さな体で頑張ったんだなって、大好きな弟たちを守ろうと思ったのかもしれないし、恐怖で必死に立ち向かって行ったのかもしれない。

そしてお腹を蹴られた北斗☆は「急におとなしくなってトボトボと自分で歩いて自分の布団に行った」って。

内臓が破裂した体で、どんな思い出自分の居場所を探したんだろう。

なんでママは僕を置いて行っちゃったの?どうしてママは一緒にいてくれないの?

苦しくて痛くて寂しくて怖くて…。

どれほどの思いで北斗☆は一人で逝ったんだろう。

かわいそうで、申し訳なくて、今更どうやって償えばいいのか分からない。

紫桜がうちに来てからしばらくして、彼は紫桜を床に投げつけた事があった。

紫桜は腕を骨折した。

北斗☆も背骨を骨折したことがあった。

私が帰宅するとうずくまって元気がない。

病院を3つくらい回ったけど、「風邪」と言われてでっかい注射をされるばかりだった。

ちっとも良くならないので最後に行った病院で背骨の骨折を見つけてもらった。

北斗☆は後ろ足が使えなくなった。

それも「壁に投げつけた」そうだ。

彼は知らん顔して病院にも付き添った。神奈川の大学病院まで行ってMRI検査を受けるのにも彼が運転してくれて行った。

犬たちを連れて旅行も行ったし、ワンコのオフ会にも何度も参加した。

その裏で、「見てない時に全員いじめた。バレないように。傷がつかないように。」だって。

この子たちはどれほどの意味不明な虐待を受けてきたんだろう。

北斗☆は不思議で仕方なかったに違いない。

ママはどうしてそのこわい人と一緒にいるの?どうして笑ってるの?

北斗☆のお骨は五右衛門が亡くなるまでリビングにありました。

死んでからまでも、ずっと私は北斗☆を縛り付けてきた。

彼は言った「ドールやらBLやらいっぱい買ってあげるのは北斗のことがあったから罪滅ぼしみたいなもの」。

私は北斗☆の命を犠牲にして、そのおかげの嘘の幸せに満足して北斗☆の骨の前で笑ってた。

ひどいことをし続けてた。

私は今居る子たちにせめて幸せな死を迎えさせなければいけない。

この子たちが居なくなるまでは彼に復讐もできない。

  
北斗☆はとてもいい子だった。

小さい頃はすごくやんちゃで、走り回って、おしっこその辺にしちゃって、甘噛みがひどくてずっと私の足の甲を噛んでて、私の足は内出血で紫色してた頃もあった。

いつの間にかトイレは完璧になって、滅多に吠えない、人が大好きで職場に連れて行くと会社に出入りしているヤクザのおじさん達にも可愛がられる子だった。

あの日の仕事にだって連れて行くことはできたのに。

寝坊した私は慌てて家を出て、ちょろっと北斗☆の顔を見ただけ。

ちゃんと起きて、準備して連れて出られれば北斗☆は死ななくて済んだのに。

北斗☆を迎えた時、赤ちゃんの名付け辞典を買った。

子供が出来なかった私の大事な大事な息子。

一応人間と区別するために名前の後ろに「☆」つけた。

ベビー服を見ては、北斗☆だったらこういうのかなって思ったり、私にとっては人間の子供と変わらなかった。

その子を殺したんだから彼は殺人罪。

決して動物愛護法違反なんてものでは済ませない。

彼の中では私に事実を言うことで全て終わったみたいにスッキリしてるみたいだけどね。

こんな話をした後に、女の子とLINEして電話してケラケラ笑いながら相談乗って、カウンセラー気取りで偉そうなこと言って。

落ち込んでる私にかけた言葉が「どうしたの?具合い悪いの?」だって。

許さない。

北斗☆の苦しみを、痛みを。

他の子達の痛みも苦しみも。

そのうち必ず。

私も同じく罰を受けなければ。

気付いてやれなかった、守ってやれなかった、うやむやにしてた、知らずに笑って過ごしていたことに。

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